地震保険をやめた人と、後悔した人。
分かれ目はどこか

2026年9月

何年も払っているのに、一度も使っていない。
この保険、やめてもいいのではと思ったことはないだろうか。

そう思うのは、仕組みを正しく理解しているからだ。
地震保険は掛け捨てで、しかも家を建て直せる額は出ない。
使わなければ何も残らないので、やめる理屈のほうが立ちやすい。

この記事では、やめた人が実際に何を手放すのかを調べた。
約款の原文にあたり、入り直せるのかどうかも確かめている。
読めば、自分がやめていい側かどうかを判断できる。

結論を先に書く。やめても、あとから入り直せる
ただし、入り直せなくなる瞬間が決まっている。そこだけ知っておきたい。

夕方のダイニングテーブルに置かれた、開いた書類と電卓、ペン、マグカップ

やめたくなるのは、当然の反応だ

地震保険には、続けるのが難しくなる条件がそろっている。

10年払い続けて地震が来なければ、手元には何も残らない。
その計算をした人が、やめようと考えるのは自然なことになる。

だから、この記事では「続けましょう」とは書かない。
代わりに、判断するための物差しを1つだけ置く。

物差しは「暮らしが立て直せなくなるか」の1つでいい

保険を掛けるかどうかは、本来この軸で決まる。
起きる確率と、起きたときの損害の大きさだ。

保険で備えるべき範囲 損害 保険で備える 家の全壊 大黒柱を失う 保険料が高くなる そもそも商品が 成り立ちにくい 損害 貯金で足りる スマホを落とす 貯金で足りる 日々の細かい出費 確率 低 確率 高 起きにくく、起きたら立て直せない。そこだけが保険の出番になる。
保険が効くのは左上だけ。それ以外は貯金のほうが合理的になる。

保険が向いているのは、左上だけになる。
めったに起きないが、起きたら自力では戻れない損害だ。

たとえば、一家の大黒柱が亡くなる。
収入が止まって家族の暮らしが立ち行かなくなる。ここは保険の出番だ。

逆に、車をぶつけて修理代が20万円かかったとする。
痛いが、暮らしが壊れるほどではない。ここは貯金で足りる。

この軸を、地震保険に当てはめる

問うべきことは1つになる。
家が大きく壊れたとき、自分の家計はそこから立て直せるか。

状況判断の傾き
住宅ローンが多く残っている立て直しが難しい側
建て替えに回せる貯金がない立て直しが難しい側
戻れる実家や持ち家が別にある自力で持ちこたえられる側
家財を買い直す現金がすぐ出せる自力で持ちこたえられる側

下の2つに当てはまるなら、やめる判断は成り立つ。
上の2つに当てはまるなら、やめると次の一手が打てなくなる。

金額の大小ではなく、立て直せるかどうかで決める。
これが、この記事で言いたいことのすべてになる。

ここは正直に。地震保険では家は建て直せない

期待を先に下げておきたい。

地震保険の建物の契約金額は、火災保険の30〜50%までと決まっている。
火災保険が2,000万円なら、地震保険は最大でも1,000万円になる。

しかも支払われるのは、実際の修理費ではない。
損害の区分に応じた、契約金額の割合になる。

区分支払われる割合
全損100%
大半損60%
小半損30%
一部損5%

全損でも、火災保険の半分までしか出ない。
つまり地震保険は、家を元に戻すための保険ではない。

買っているのは、次の一手を打つまでの時間になる。
仮住まいの家賃、家財の買い直し、収入が止まる間の生活費だ。

やめた人が手放すものは、3つある

保険料が浮くのは事実だ。
ただ、同時に手放しているものも見ておきたい。

① 被災直後に動くための現金

これが本体になる。半損以上なら、契約金額の30%以上が入る。
片づけと仮住まいの費用に、そのまま回せるお金だ。

② 地震保険料控除

見落とされやすいのがここになる。
払った保険料の一部が、毎年の税金から差し引かれている。

やめれば、この控除も同時に消える。
「浮いた保険料」から、この分は引いて考えたい。

控除の計算は年末調整の記事にまとめた。

③ 好きなときに入り直せる状態

これはあとで詳しく書く。
入り直せる期間は、いつでも開いているわけではない。

やめる人は、どれくらいいるのか

自分だけが迷っているのか、気になるところだ。
数字を見ておきたい。

火災保険に地震保険を付けている割合を、付帯率という。
2024年度は70.4%だった。火災保険に入る人の7割が付けている。

一方、全世帯に対する加入率は約35%になる。
そもそも火災保険に入っていない世帯も含めた数字だ。

7割という数字は、多数派が付けていることを示している。
ただし、これは「付けるべき」という根拠にはならない。

まわりが入っているかどうかと、自分の家計が立て直せるかは別の話になる。

付帯率は上がり続けている。
2010年度に20.2%だった賃貸の家財も、2023年度には46.3%になった。

数字は参考にしていい。
ただ、決めるのは自分の家の事情のほうだ。

やめる前に、もう1つの道がある

やめるか続けるかの二択で考えると、行き止まりになりやすい。
間に、もう1つ選択肢がある。

建物と家財は、別々に契約する仕組みになっている。
だから、どちらか片方だけを残すことができる。

残し方向いている人
家財だけ残す建て替えの心配より、買い直しの現金が要る人
建物だけ残す住宅ローンが多く残っている人
金額を下げて続ける保険料は下げたいが、ゼロにはしたくない人

家財だけを残す形は、賃貸の人と同じ持ち方になる。
保険料は建物より小さくなることが多い。

全部やめる前に、この3つと比べてみたい。

やめても入り直せる。ただし閉まる瞬間がある

まず良い知らせから書く。
地震保険は、火災保険の契約の途中からでも付けられる。

損害保険協会が出しているご契約のしおりに、こう書かれている。
火災保険の契約時に地震保険を付けなかった場合でも、期間の中途から契約できる、と。

つまり、一度やめても後から戻れる。
そこは安心していい部分になる。

ただし、同じ文章には例外も書かれている。
東海地震に係る地震防災対策強化地域では、警戒宣言が出てから一定の期間は契約できない。

そしてもちろん、地震が起きたあとに入ることもできない。

ここが「後悔した」につながる場所になる。
やめること自体ではなく、閉まったあとに気づくことが問題になる。

やめるなら、入り直す条件を知ったうえでやめたい。

「後悔した」と言われる場面は、3つに分かれる

後悔にも種類がある。混ざったまま語られることが多い。

後悔の中身本当の原因
やめた直後に地震が来た入り直す時期を逃した
一部損で5%しか出なかった期待と仕組みのずれ
家財を付けていなかった建物だけで契約していた

2つ目は、やめたことへの後悔ではない。
入っていた人が、出た額に驚いたという話になる。

3つ目は見落としやすい。地震保険は建物と家財を別々に契約する。
建物だけ付けていると、家の中の被害には1円も出ない。

熊本地震の実績では、家財のほうが重い判定を受けていた。
その数字は支払い事例の記事に書いた。

意外と知られていない、3つのルール

やめるかどうかを決める前に、知っておきたい決まりがある。
どれも約款に書かれているものだ。

① 地震から10日を過ぎた損害は対象外

地震が起きた日の翌日から数えて、10日を過ぎてから生じた損害は出ない。
あとから傷みが進んだ分は、地震のせいでも対象にならない。

② 72時間以内の地震は、まとめて1回とみなす

大きな地震のあとには、余震が続く。
72時間以内に起きた複数の地震は、1回として扱われる。

2度目の揺れで被害が広がっても、支払いは1回分になる。

③ 総額には上限がある

1回の地震で保険会社全体が支払う額には、上限が決まっている。
2022年6月時点で12兆円だ。

これを超えると、支払額が削られる可能性がある。
ただし東日本大震災のときは、削減されずに全額が支払われた。

年間の保険料は、思っているより幅がある

やめる判断の前に、実際の負担額を見ておきたい。
「高い気がする」で決めると、あとで惜しくなることがある。

地震保険の保険料は、2つの条件だけで決まる。
建物のある都道府県と、建物の構造だ。

どの保険会社で入っても、金額は1円も変わらない。
法律にもとづく制度なので、会社ごとの差が出ない仕組みになっている。

そのうえで、割引が使える。
免震建築物や耐震等級の割引で、最大50%まで下がる。

割引は、自分から申し出て資料を出さないと付かないことがある。
建てたときの書類に、耐震等級が書かれていないか探してみたい。

付いていない割引があれば、やめる前にそこを直すほうが早い。

実際の金額の幅はいくらかかるかの記事に一覧で載せた。
自分の県と構造で見てから、続けるかどうかを決めたい。

やめる前に、確かめたい4つ

  1. 保険証券を出して、建物と家財のどちらに付けているか見る
  2. 年間の保険料が実際いくらか確かめる(思っているより安いことがある)
  3. 耐震等級や建築年の割引が使えていないか確認する
  4. やめるのではなく、契約金額を下げる選択肢と比べる

3つ目は効く場合がある。割引は最大で50%になる。
使っていないまま払い続けている人がいる。

4つ目も現実的な選択になる。
やめるか続けるかの二択にする必要はない。

保険料の決まり方はいくらかかるかの記事にまとめた。

よくある疑問に、先に答えておく

途中でやめたら、保険料は戻ってくるのか

長期の契約なら、残りの期間に応じて戻ることが多い。
日割りではなく決まった係数で計算されるので、金額は保険会社に確認したい。

地震保険だけ、単独で入れるのか

入れない。地震保険は火災保険とセットでしか契約できない。
だから、やめても火災保険のほうは残ることになる。

入り直すとき、保険料は上がっているのか

可能性はある。料率は改定されることがあるからだ。
ただし、どの保険会社で入っても保険料は同じになる。

家財だけ残す、という選び方はできるのか

できる。建物と家財は別々に契約する仕組みになっている。
賃貸の人は、そもそも家財だけを掛けている。

耐震性が高い家なら、やめてもいいのでは

建物についてはその判断もありうる。
ただし建物が無事でも、家の中の物は倒れて壊れる。

やめて、共済に切り替えるのはどうか

共済は地震保険とは別の制度になる。切り替えではなく、乗り換えだ。
補償の内容も支払いの仕組みも違うので、同じものとして比べられない。

違いはどこがいいかの記事にまとめた。

子どもが独立したら、見直したほうがいいのか

家財の額は見直す価値がある。人数が減れば持ち物も減るからだ。
金額の目安は相場の記事に載せた。

やめる・続けるは、今日決めなくていい

この記事は、続けることをすすめるためのものではない。
掛け捨てで全額も出ない保険なので、やめる判断は十分に成り立つ。

ただ、決めるときに見てほしい順番がある。

まず証券を出して、いくら払っているかを確かめる。
次に、家が大きく壊れたときに立て直せるかを考える。
そのうえで、やめる・減らす・続けるを選べばいい。

入り直す扉は、いまは開いている。
閉まるのは、地震が起きたあとになる。

このサイトについて

「モノレキ」という名前で、家にある物の買い替え時期と保険を1画面で見るアプリを作っている。

家にある物の合計額が分かると、家財をいくらで掛けるかの判断がしやすくなる。
やめるか減らすかを考えるときの、材料のひとつになる。

公開は2026年12月を予定している。まだ完成していない。

出典

火災保険の途中から地震保険を契約できること、警戒宣言中の例外について。
地震の翌日から10日を過ぎた損害が対象外であること、72時間ルール、12兆円の上限も同じ資料による。
日本損害保険協会「地震保険 ご契約のしおり」(2022年10月改定版)

建物は火災保険の30〜50%までという範囲について。
支払われる割合も同じページによる。
全損100%、大半損60%、小半損30%、一部損5%の根拠。
財務省「地震保険制度の概要」

付帯率70.4%(2024年度)、世帯加入率約35%について。
賃貸の家財の付帯率も、同じ統計による。
2010年度20.2%、2023年度46.3%の根拠。
損害保険料率算出機構「地震保険統計速報」

割引が最大50%であることについて。
財務省「地震保険の基本料率」

本文の数字とURLは2026年8月28日に、上記の各資料で確認した。
制度や料率は改定されることがあるため、契約の判断は保険会社に確認してほしい。

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