賃貸の家財保険。
建物は大家、家財は自分
入居のときに言われるまま入った保険、中身を見たことがあるだろうか。
見ていないのが普通で、それで困った人もあまりいない。
中身を見ないのには、背景がある。
賃貸では保険が契約の条件になっていることが多い。
選ぶ余地がないように見えるので、確認する動機が生まれない。
この記事では、賃貸の保険が3つの部品でできていることを書いた。
借家人賠償が実質外せない理由と、地震保険を付けるかどうかも扱う。
読めば、次の更新で自分の意思で選べるようになる。
結論から言うと、やることは証券を1枚出すだけだ。
見るのは3か所で、変えないと決めてもかまわない。
言われるまま入った。それが普通だと思う
部屋を借りるとき、契約書の束と一緒に保険の紙が出てくる。
説明は数分で終わり、そのまま署名する。
引っ越しの当日は、他に決めることが多すぎる。
保険の中身をその場で吟味した人は、ほとんどいないと思う。
それで困ったという話も、あまり聞かない。
だから今日まで、中身を見ないまま更新してきた。
ひとつだけ先に断っておく。
これは入り直す話ではない。今の契約を読むための記事だ。
賃貸の保険は、3つの部品でできている
持ち家の火災保険は「建物」と「家財」の2つに分かれる。
賃貸では、この形が変わる。
建物は自分の物ではないので、自分では保険をかけない。
代わりに、他人への賠償が2つ付いてくる。
| 補償の名前 | 誰のために | 使う場面 |
|---|---|---|
| 家財 | 自分と家族 | 火事や水漏れで家具・家電が壊れた |
| 借家人賠償責任 | 大家 | 部屋そのものを焼いた・壊した |
| 個人賠償責任 | 他の住人など | 洗濯機の水が下の階に漏れた |
いちばん外せないのは、真ん中の借家人賠償
自分の火の不始末で部屋を焼いてしまった場合を考える。
部屋は大家の物なので、元に戻す義務が自分に残る。
この金額は、家財の比ではない。
建物の修理費なので、桁がひとつ変わることがある。
そのため多くの物件で、借家人賠償責任が付いた保険への加入が契約の条件になっている。
「保険は入りたくない」が通りにくいのは、家財のためではなく、この部分のためだ。
不動産会社で勧められる保険が一律なのも、ここに理由がある。
この条件さえ満たしていれば、会社は自分で選んでよいことが多い。
自分で選び直せる。ただし、順番がある
更新の案内が来たとき、同じ内容で他社に切り替えることはできる。
ネット申込の商品のほうが、保険料が下がる場合がある。
ただし、勝手に切り替えると話がこじれる。
やる順番は、次の3つになる。
- 今の契約書で、保険の条件を確認する(借家人賠償の金額が書いてある)
- 管理会社か大家に、他社でもよいかを聞く
- 条件を満たす保険に申し込み、証券の写しを提出する
手間の割に、下がる額は年に数千円のことが多い。
更新のタイミングでだけ考えれば十分だと思う。
家財の金額は、多すぎても意味がない
家財の保険金額は、契約のときに決めた額のままになっている。
10年住んでいれば、部屋の中身はもう当時と違う。
ここで大事なのは、掛けた額がそのまま戻るわけではない点だ。
戻るのは、実際に壊れた物を買い直す金額になる。
家財1,000万円で契約しても、部屋の中身が300万円分なら、戻るのは300万円まで。
差の700万円分の保険料は、受け取りにつながらない。
逆に、低く設定しすぎると足りなくなる。
目安を人から借りるより、自分の部屋を数えたほうが早い。
数え方は難しくない。
部屋ごとに、いま買い直したらいくらかを足していくだけだ。
- 冷蔵庫・洗濯機・エアコン・テレビ(ここが金額の大半になる)
- ベッド・ソファ・机・棚
- パソコン・スマホ・自転車
- 服・食器・調理器具(1点は安いが、数が多い)
賃貸に地震保険は必要か
「賃貸だから地震保険はいらない」と言われることがある。
これは半分正しい。
正しいのは、建物の分が不要だという点だ。
部屋が倒れても、それを直すのは大家であって自分ではない。
ただし、部屋の中の物は自分の物のままだ。
賃貸で地震保険を付ける場合、対象は家財だけになる。
付けない、という判断もある
家財の額が小さいなら、付けない選択は十分に成り立つ。
一人暮らしで家具が少ない部屋なら、なおさらだ。
地震保険は、壊れた分が全額戻る仕組みにはなっていない。
損害の程度で区分され、その割合の金額が支払われる。
そのため、家財が少ない部屋では受け取る額も小さくなる。
保険料と見合うかは、人によって答えが変わる。
付ける人が買っているもの
逆に、家族で住んでいる部屋は事情が違う。
冷蔵庫と洗濯機とテレビが同時に使えなくなる、という事態が起きる。
そのうえ、部屋に住めなくなれば引っ越しが要る。
敷金と礼金と引っ越し代が、同じ月にまとめて出ていく。
賃貸の地震保険で買っているのは、家財の弁償というより次の部屋に移るまでの現金に近い。
貯金でその期間を越せるなら、入らない判断も筋が通る。
なお、地震保険は単独では入れない。
いま入っている火災保険に付ける形になる。
よくある事故で、どの補償が働くかを見る
3つの部品の話を、実際の場面に当てはめてみる。
どれが働くかが分かると、契約書が読めるようになる。
- 料理の火で壁を焦がした → 借家人賠償(大家への弁償)
- 洗濯機のホースが外れ、下の階に水が漏れた → 個人賠償
- その水漏れで、自分のテレビも壊れた → 家財
- 台風で窓が割れ、雨で家具が濡れた → 家具は家財。窓は大家の側
1つの事故で、複数の補償が同時に働くことがあると分かる。
「どれか1つ入っていれば安心」ではない理由がここになる。
家財に地震保険を付けると、いくらになるのか
賃貸の地震保険は、家財の保険金額の30〜50%で設定する。
家財300万円なら、地震保険は90万〜150万円の幅になる。
保険料は公式の料率で計算できる。
地域と構造で決まり、保険金額1,000万円あたり年7,300円〜41,100円だ。
家財150万円分なら、この0.15倍になる。
一番高い東京の木造でも、年6,165円だ。
月に直すと500円ほどになる。
建物ごと掛ける持ち家より、ずっと小さい話で済む。
数字は2022年10月改定の料率で、2026年8月に財務省ページで確認した。
正確な額は、いま入っている保険会社の見積もりで分かる。
家財の総額を、ざっくり出してみる例
一人暮らしの部屋で、ためしに数えるとこうなる。
- 家電(冷蔵庫・洗濯機・テレビ・レンジなど): 約30万円
- 家具(ベッド・机・棚): 約20万円
- 衣類・寝具: 約20万円
- 食器・調理器具・その他: 約10万円
合計で約80万円。あくまで一例だが、桁の感覚はつかめると思う。
家族の人数が増えると、これが数倍になっていく。
家族で住んでいるなら、証券の置き場所を決める
被災した日に、家にいるのが自分とは限らない。
保険会社に電話をかけるのは、家族のほうかもしれない。
そのとき必要なのは、どこの保険会社かと、証券番号だ。
紙が部屋のどこにあるか、家族が知らなければ探せない。
写真を撮って共有しておくだけでいい。
大げさな準備ではなく、5分で終わる作業になる。
更新の案内が来た日の、実際の手順
切り替えを考えるなら、流れはこうなる。
順番どおりにやれば、こじれない。
- 賃貸の契約書で、保険の条件を確認する
- 今の証券で、家財と借家人賠償の金額を控える
- 管理会社か大家に、他社でもよいか聞く
- 同じ条件で見積もりを取る
- 差額と手間を比べて決める
- 変えるなら、新しい証券の写しを提出する
比べた結果、差が小さければそのまま更新でいい。
中身を知ったうえでの更新は、言われるままの更新とは別物だ。
証券が見つからない人は、まず管理会社
「そもそも証券がどこにもない」という人もいると思う。
その場合、考えられる形は2つある。
1つは、入居時の書類の束に紛れている形。
契約書のファイルを最初に探すのが早い。
もう1つは、大家や管理会社の側で一括加入している形だ。
この場合、自分の手元に証券がないのが正常になる。
どちらか分からなければ、管理会社に聞けば1本で済む。
「火災保険はどこで入っている契約ですか」と聞くだけでいい。
よくある疑問に、先に答えておく
不動産会社の保険は、割高なのか
一概には言えない。
ただ、2年分をまとめて払う形が多く、総額が見えにくいのは確かだ。
高いかどうかは、中身を見ないと判断できない。
家財と借家人賠償の金額を控えて、同じ条件で見積もると比べられる。
途中で解約したら、お金は戻るのか
まとめて払った保険料は、残りの期間の分が戻ることが多い。
引っ越しで解約する時は、忘れずに手続きしたい。
引っ越すときは、どうすればいいのか
住所変更で同じ契約を続けられる場合と、入り直す場合がある。
まず今の保険会社に連絡するのが早い。
新居で別の保険に入るなら、古い契約の解約を忘れない。
気づかず二重に払い続けている人は、実際にいる。
外で壊した物・盗まれた物はどうなるのか
家財保険が守るのは、基本的に家の中にある物だ。
外出先でのスマホの落下や自転車の盗難は、そのままでは対象にならない。
外の分は「携行品」などの特約を付けて備える形になる。
付いているかどうかも、証券で確認できる。
今日のうちに見ておくところ
契約書か保険証券を1枚出して、3か所だけ見る。
それで、この記事の内容はほぼ足りる。
- 家財の保険金額(今の部屋の中身と合っているか)
- 借家人賠償責任の有無と金額(契約の条件になっている部分)
- 地震保険が付いているか(付いていない契約も多い)
見た結果、何も変えなくてもいい。
知らないまま更新するのと、知って据え置くのは違う。
「モノレキ」という名前で、家にある物の買い替え時期と保険を1画面で見るアプリを作っている。
登録した家電や家具の金額が合計で出るので、家財をいくらに設定するかを考えるときに使える。
公開は2026年12月を予定している。まだ完成していない。
地震保険が火災保険とセットでのみ加入できること、支払いが損害の区分で決まることについて。
財務省「地震保険制度の概要」
保険料の幅(2022年10月改定の基本料率)について。
財務省「地震保険の基本料率」
本文の数字は2026年8月23日に上記ページで確認した。
借家人賠償責任および家財の評価の考え方について。
日本損害保険協会