地震保険はいくらもらえた?
支払い例と、出なかった例
「いくらもらえた」で検索して、知恵袋を読んでいないだろうか。
他人の金額を探すのは、じつは正しい行動だ。
保険会社は、自社の支払い実例を生々しくは書けない。
だから公式ページを見ても、実額が出てこない。
結果として、個人の書き込みを探すことになる。
この記事では、他人の話を集める代わりに計算式を書いた。
支払い例の早見表と、保険金が出なかった4つの理由も載せている。
読めば、他人を探さずに自分の受取額が出せる。
結論は「答えは自分の証券の中にある」になる。
知恵袋を10件読むより、証券を1枚探すほうが早い。
他人の金額を探しているなら、それは正しい行動だ
「地震保険 いくらもらえた」で検索すると、知恵袋や個人ブログが並ぶ。
保険会社の説明ではなく、実際にもらった人の話を探しているはずだ。
その探し方は、間違っていない。
保険会社は自社の支払い実例を、生々しくは書けないからだ。
ただ、他人の金額を見ても、自分の額は分からない。
理由は単純で、契約している金額が人によって違うからだ。
ただ、地震保険は受け取る額が計算で出せる保険になっている。
他人を探さなくても、自分の額なら出せるということだ。
支払い額は、2つの数字の掛け算で決まる
地震保険は、壊れた物を1つずつ査定して合計する保険ではない。
被害の程度を4段階で判定し、契約金額に対する割合で支払う。
受け取る額 = 契約している保険金額 × 損害区分の割合
割合は、全損100%・大半損60%・小半損30%・一部損5%と決まっている。
だから「支払い例」を知りたいなら、他人を探す必要がない。
自分の保険金額に、この4つの割合を掛ければ出る。
支払い例の早見表
実際に金額にしてみる。まず建物の例から。
| 損害区分 | 割合 | 建物1,000万円の場合 |
|---|---|---|
| 全損 | 100% | 1,000万円 |
| 大半損 | 60% | 600万円 |
| 小半損 | 30% | 300万円 |
| 一部損 | 5% | 50万円 |
次に家財の例。こちらを知りたい人のほうが多いと思う。
| 損害区分 | 家財500万円 | 家財300万円 |
|---|---|---|
| 全損 | 500万円 | 300万円 |
| 大半損 | 300万円 | 180万円 |
| 小半損 | 150万円 | 90万円 |
| 一部損 | 25万円 | 15万円 |
知恵袋で見かける「20万円だった」「300万円出た」という話も、
この表のどこかに必ず収まっている。
金額がばらつくのは、契約額と区分が人ごとに違うからだ。
仕組みそのものは、全員に同じルールが適用されている。
本当の分かれ目は「一部損に届くかどうか」
ここが、この記事でいちばん大事なところになる。
4つの区分のどれにも当たらなければ、支払いはゼロだ。
そして多くの人が関わるのは、一番下の一部損の線になる。
家財の場合、線は「10%」
家財の損害区分は、次のように決まっている。
日本損害保険協会の損害認定基準に書かれているものだ。
- 全損: 家財の損害額が家財の時価の80%以上
- 大半損: 60%以上80%未満
- 小半損: 30%以上60%未満
- 一部損: 10%以上30%未満
つまり、家財全体の1割に届かない損害では、支払いはない。
ここを知らずに申請して、落胆する人が多い。
「家財全体の1割」は、思ったより大きい
家財の判定は、壊れた物を1つずつ足し上げる方式ではない。
家財を5つに分類し、その傷み具合から全体の損害割合を出す。
分類は、食器類・電気器具類・家具類・身回品その他・寝具衣類の5つになる。
この方式だと、食器が数枚割れただけでは1割に届かない。
食器は家財全体の中で、占める割合が小さいからだ。
逆に、食器棚と本棚が倒れて中身がまとめて壊れた場合。
複数の分類にまたがって損害が出るので、1割に届く場合が出てくる。
この記事で「あなたは出ます」と書くことはできない。
判定するのは保険会社で、実際に家を見た上で決まるからだ。
ただ、どこに線があるかを知っておけば、期待の持ちすぎも諦めすぎも減る。
「おりなかった」と言われる、4つの理由
保険金が出なかった話も、検索されている。
正直に、理由を4つに分けて書く。
理由1: 一部損の線に届かなかった
いちばん多いのがこれになる。
被害の実感と、制度の線がずれている場合だ。
本人にとっては大変な被害でも、家財全体の1割に届かないことがある。
制度がそう作られているので、交渉で変わる部分ではない。
理由2: そもそも地震保険を付けていなかった
火災保険には入っていたが、地震保険は付けていなかった。
この場合、地震による損害では1円も出ない。
地震が原因の火事も、火災保険からは出ない。
ここは誤解が多いので、別の記事でも書いた。
理由3: 地震による損害だと確認できなかった
壁のひび割れが、地震で入ったのか、前からあったのか。
この切り分けがつかない場合がある。
だから「壊れる前の状態」が分かる記録が効いてくる。
ここは、あとで手順の章にまとめる。
理由4: 片づけてしまった・申請しなかった
被害の状態を残さずに片づけてしまうと、判定の材料が減る。
また「どうせ出ないだろう」と申請自体をしない人もいる。
申請しなければ、当然ゼロで終わる。
判定するのは自分ではないので、迷ったら出すほうが筋は通る。
実際の支払いは、どれくらいの規模だったのか
個人の体験談ではなく、公表されている数字を見る。
日本地震再保険が公表している支払状況(2026年3月末時点)だ。
| 地震 | 支払件数 | 支払保険金 |
|---|---|---|
| 東北地方太平洋沖(2011年) | 826,557件 | 約1兆2,897億円 |
| 熊本(2016年) | 215,930件 | 約3,914億円 |
| 福島県沖(2022年) | 341,294件 | 約2,803億円 |
| 福島県沖(2021年) | 246,883件 | 約2,516億円 |
| 大阪府北部(2018年) | 160,049件 | 約1,252億円 |
1件あたりに割ると、東日本大震災でおよそ156万円になる。
全損の人から一部損の人までを、全部まとめた平均だ。
この数字は「みんなこれくらいもらえる」という意味ではない。
ただ、支払いの規模の感覚はつかめると思う。
支払いは、思ったより早い
東日本大震災では、震災後およそ3ヶ月で約50万件・約1兆円が支払われた。
津波の被害が大きい地域は、航空写真で地域ごとに全損と一括認定された。
証券が流されて保険会社が分からない人のために、
契約先を照会できる制度も立ち上げられている。
「災害の時に本当に払われるのか」という不安はもっともだ。
ただ、過去の実績としてはこの規模で動いている。
ここが正直なところ。保険金では足りない
期待を持たせて終わりたくないので、逆側の数字も書く。
内閣府の資料によると、東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の
新築費用は平均で約2,500万円だった。
それに対して、公的な支援として受け取れたのは、
義援金を合わせても約400万円にとどまっている。
建て直すのに約2,500万円。公的支援は約400万円。
地震保険は、この差を埋めるための手段のひとつという位置づけになる。
そして地震保険だけでも、この差は埋まらない。
保険金額は火災保険の30〜50%までしか設定できないからだ。
だから「入っていれば元通りになる」とは書けない。
もらえるのは、次の一手を打つための現金に近い。
その現実を知ったうえで、必要かどうかを決める話になる。
判断の材料は地震保険は必要かの記事にまとめた。
もらい損ねないための、4つの手順
制度の線は動かせないが、材料をそろえることはできる。
やることは4つになる。
- 平時に、部屋の写真を撮っておく(壊れる前の状態が分かる)
- 被災したら、片づける前に撮る(部屋全体と、壊れた物のアップ)
- 壊れた物を捨てる前に、保険会社に連絡する(確認を求められる場合がある)
- 迷っても、まず申請する(判定するのは自分ではない)
1と2の撮り方は、写真の撮り方の記事に詳しく書いた。
特に1が効くのは、理由3の「地震による損害か分からない」場面だ。
前の状態が残っていれば、比べる材料になる。
裏ワザはない。あるのは手順だけ
「地震保険 裏ワザ」という検索も存在する。
気持ちは分かるが、正直に書くと裏ワザは存在しない。
判定の基準は公開されていて、全社共通で運用されている。
交渉のうまさで区分が変わる仕組みにはなっていない。
あるのは、材料をそろえて正しく申請することだけだ。
そして、それだけで結果が変わる場面は実際にある。
よくある疑問に、先に答えておく
判定に納得できない時は、どうするのか
まず保険会社に再調査を申し出ることができる。
認定の根拠を説明してもらうところから始まる。
それでも折り合わない場合は、そんぽADRセンターという窓口がある。
損害保険協会が運営していて、無料で相談できる。
保険金の使い道は、決められているのか
決められていない。何に使っても構わない。
家を直さずに、仮住まいや生活費に充てても問題はない。
「生活の安定に寄与すること」が制度の目的だからだ。
1回もらったら、契約は終わりなのか
全損で保険金を受け取った場合は、その契約は終了する。
一部損などで受け取った場合は、契約は続く。
ただし、同じ地震で2回請求することはできない。
72時間以内に起きた地震は、1回の地震として扱われる。
賃貸でも受け取れるのか
受け取れる。ただし対象は家財だけになる。
建物は大家の側の話なので、自分にはかけられない。
くわしくは賃貸の家財保険の記事に書いた。
申請から入金まで、どれくらいかかるのか
被害の規模と地域の状況によって変わるので、一概には言えない。
目安として、東日本大震災では3ヶ月で約50万件が支払われている。
大きな災害ほど応援体制が組まれるので、必ずしも遅くはない。
結局、答えは自分の証券の中にある
「いくらもらえたか」を他人に聞いても、答えは出ない。
その人の契約金額と、その人の被害の程度の話だからだ。
自分の答えは、保険証券に書いてある保険金額に
4つの割合を掛けるだけで出てくる。
そして、それが多いか少ないかを判断できるのは自分だけになる。
家にある物を買い直すのに、いくら要るかを知っているからだ。
証券を1枚探して、家財の欄を見る。
知恵袋を10件読むより、それが早い。
「モノレキ」という名前で、家にある物の買い替え時期と保険を1画面で見るアプリを作っている。
登録した家財の合計額が出るので、受け取れる額と買い直す額を並べて見られる。写真も品物ごとに残せる。
公開は2026年12月を予定している。まだ完成していない。
支払区分の割合、保険金額の範囲について。
財務省「地震保険制度の概要」
家財の損害区分の認定基準と、5分類について。
日本損害保険協会「地震保険 損害の認定基準」(2022年10月1日)
地震別の支払件数・支払保険金(2026年3月末時点)について。
日本地震再保険株式会社「地震再保険金支払状況」
東日本大震災の3ヶ月間の支払いと、航空写真による一括認定について。
また、全壊住宅の新築費用約2,500万円と公的支援約400万円について。
日本地震再保険株式会社「東日本大震災から12年」(内閣府資料を引用)
本文の数字は2026年8月23日に上記の各ページで確認した。
制度や統計は更新されるため、最新の情報も確かめてほしい。